私が合同会社を選択した理由
2016/03/18
会社の設立を考える時、はじめに検討しなければならないことはたくさんありますが、その中でも重要度が高く、後からの変更には大きな労力が伴うため、慎重に検討をしておきたいのが「会社形態」です。
「会社形態」とは、会社法で規定されている会社の種類で、「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4種類があります。
私はなぜこの中から「合同会社」を選択したのか、その判断材料と理由についてお伝えしたいと思います。
株式会社・合同会社・合名会社・合資会社の比較
特徴
まずはそれぞれの会社形態の特徴について比較してみたいと思います。
メリット・デメリットがわかりやすいように、メリットは青文字・デメリットは赤文字で記載しています。
会社形態 | 株式会社 | 合同会社 | 合名会社 | 合資会社 |
---|---|---|---|---|
出資者 | 1人以上でOK | 1人以上でOK | 1人以上でOK (法改正により1人会社可) |
2人以上 |
出資者責任 | 間接有限責任 | 間接有限責任 | 無限責任 | 無限責任 直接有限責任 |
出資の目的 | 金銭・その他の財産 | 金銭・その他の財産 | 金銭・その他財産・信用・労務 | 金銭・その他財産・信用・労務 |
出資金額 | 1円以上 | 1円以上 | 金・物以外も可 | 金・物以外も可 |
決算公告 (決算の公表) |
必要 | 不要 | 不要 | 不要 |
内部自治 | 法規規制 | 定款自治 | 定款自治 | 定款自治 |
内部自治 (利益・権限の配分) |
出資額に比例 | 自由 | 自由 | 自由 |
内部自治 (機関設計) |
株主総会と取締役1名必要 (監視機関の設置が必要) |
規定なし (意思決定は業務執行社員の過半数で決める) |
規定なし (意思決定は業務執行社員の過半数で決める) |
規定なし (意思決定は業務執行社員の過半数で決める) |
役員任期 | 最長10年 (役員改選の義務あり) |
なし | なし | なし |
社会的認知度 | 高い | やや低い | 低い | 低い |
株式公開 | できる | できない | できない | できない |
設立費用
続いて、それぞれの会社形態の設立にかかる費用について比較してみたいと思います。
細かい諸費用まで考慮すると複雑になりますので、メインでかかってくる費用を記載します。
会社形態 | 株式会社 | 合同会社 | 合名会社 | 合資会社 |
---|---|---|---|---|
定款認証手数料 | 5万円 | 0円 | 0円 | 0円 |
印紙税 | 4万円 | 4万円 | 4万円 | 4万円 |
登録免許税 | 15万円 | 6万円 | 6万円 | 6万円 |
合計 | 24万円 | 10万円 | 10万円 | 10万円 |
※印紙税(4万円)について、電子定款による認証の場合は0円になります。
合同会社のメリット・デメリット
ここまで4つの会社形態を比較してきましたが、それらを踏まえ、「合同会社」にはどのようなメリット・デメリットがあるのかをあらためて確認しておきたいと思います。
合同会社のメリット
設立費用が安い
株式会社と比べて、定款認証手数料がかからない点と登録免許税が安いという点で、安く設立することができます。
経営の自由度が高い
株主総会がなく定款で規定できるなど経営の自由度が高く、経営上の意思決定も非常にスピーディーにかつ簡単に行うことができます。
役員の任期がない
株式会社に定められている役員任期が、合同会社には定められていません。そのため、任期が終わるごとに発生する面倒な手続きや費用の心配もいりません。
有限責任である
万が一、会社が負債を抱えてしまっても、その責任は出資の範囲内になります。合資会社、合名会社は無限責任であるため、ちょっと怖いですね。
決算公告の義務がない
株式会社では通常、官報に決算内容を掲載することで決算を公表しないといけませんが(例外もあります)、合同会社はその義務がありません。ちなみに、掲載にもお金がかかるんですよねー。
合同会社のデメリット
信用度が少し下がる
合同会社での会社設立はだいぶ増えてきましたが、それでも多くの方に認知されるにはまだ時間がかかるでしょう。その分、信用度の面では株式会社に劣ってしまいます。
「代表取締役」と名乗れない
合同会社には「取締役」が存在せず、「代表取締役社長」に相当する肩書は「代表社員」になります。格好良くはないですね。
規模が大きくなった場合の対応
自由度が高いがゆえに、規模が大きくなった場合はトラブルになることがあるようです。(主に利益配分において)
上場できない
上場できるのは株式会社のみです。
資金調達の手段が少ない
株式会社に比べると、株式を増資して資金調達するといったことができません。
私が合同会社を選択した理由
さて、ここで私が4つの中から「合同会社」を選択した理由についてお伝えします。
「無限責任」は聞くだけで恐ろしいので、「合資会社」「合名会社」という選択肢は最初からありませんでした。「株式会社」と「合同会社」の比較です。
一応書いておきますと、私の場合、事業内容はウェブサイトの制作・運用関連で、とりあえずは自分一人で始めることを考えていました。事務所はどうしようか悩みましたが、当時住んでいた賃貸アパートで登記することも検討していました。(登記についてはまた別エントリーで詳しく書く予定です)
そうなると、合同会社のメリットは上述したとおりで、非常に魅力的ですね。あとはデメリットがどの程度影響してくるか。ひとつずつ考えました。
- 信用度が少し下がる
→一人では大きな企業からの受注はこなせず、当面は友人知人とその紹介で回すつもりだったから関係なし! - 「代表取締役」と名乗れない
→興味なし!どうでもいい!ちなみに、名刺には「代表」と書いています。 - 規模が大きくなった場合の対応
→規模を大きくするつもりはないため、これも関係なし! - 上場できない
→上に同じ! - 資金調達
→大きな設備投資や人員増員といったことがすぐには必要ないため、これも関係なし!
ということで、「合同会社」を選択することに何の問題もなく、大きなメリットを享受することができました。
合同会社が向いている方
私と同じような感じで会社を設立しようとするのであれば、合同会社はとてもお勧めです。
そうでなければ株式会社一択かというとそういうわけでもなく、ではどういう方が会社を設立する際に「合同会社」が向いているのか、考えてみました。
- 少人数で始める
- できるだけお金をかけたくない
- 面倒な決まり事は少ないほうが良く、自由度の高い経営が良い
- しばらくは規模を拡大するつもりはない
- 無限責任とか恐ろしくて背負いたくない
- 「株式会社じゃないと信用度が・・・」という会社と取引するつもりはない
- 肩書なんてどうでもいい
この中でいくつかあてはまりそうなものがあれば、「合同会社」での設立を検討してみてもよさそうですね。
それではまた。