登記をする時の住所「本店所在地」はどこにする?
合同会社の登記申請をする際に提出する書類の項目のひとつに「本店所在地」というものがあります。
普段の生活ではなかなか使う機会のない言葉ですが、「本社の住所」という意味です。
何も整っていない状況から会社を設立しようというときは、どこの住所で登記をしようか迷いますね。
いくつかパターンがありますので、それぞれのメリット・デメリットとともにご紹介します。
賃貸オフィス
ごくごく一般的な考え方になりますが、会社用にオフィスを借りて、その住所で登記をします。
しかし、勘の良い方であれば、ここでひとつの疑問が湧いてきます。
「会社を設立するのに住所が必要だけど、オフィスを借りるには会社が必要で・・・どっちが先だ?」
すでに存在する会社が移転する場合は何の問題もありませんが、新規設立のタイミングで借りる場合は少し面倒です。
まずは個人名義で借り、会社の登記を済ませた後に会社名義に変更してもらうのが通常です。
ただ、この場合はオーナーさんに事情を説明し、了承してもらうところからはじめ、個人で賃貸契約をする場合は保証人が必要な場合が多いため、誰かにお願いするといったことが生じます。
それでは、メリット・デメリットを整理します。
メリット
・一般的なオフィス、住所が手に入る。
・来客時にも問題なく対応できる。
・信用を得ることができる。
デメリット
・まとまった額の初期費用がかかる。
・月々の賃料もそれなりにかかる。
・保証人を立てる必要がある場合がある。
・審査によっては希望の物件が借りられない場合がある。
自宅
業種や取引先によっては、自宅を会社住所にしてしまっても問題ない場合は多いです。
持ち家の方であれば家族と相談し、賃貸の方であれば家族と大家さんと相談することになります。
一番ハードルが高そうなのは大家さんですね。
「事務所利用可」という物件もありますので、もとからそのようなところに住んでいるのであれば問題ないでしょう。
だからといって、そうでなければ望みなしというわけでもありません。
大家さんへの説明・交渉次第では許可をもらえる場合もあります。
大家さんが嫌がるのは、登記をすることで何かしらのトラブルが生じてしまうことにつきます。
人の出入りが増えて他の入居者に迷惑がかかったり、仕事道具の搬入・搬出・保管で建物が破損したり、、、
どのような事業をして、どのような使い方をするので大丈夫だということをしっかり説明できれば、あとは日頃のお付き合い次第ではすんなりとOKいただけると思います。
どうしても難しいという場合は、「事務所利用可」という物件に引っ越してしまうというのもひとつです。
それではこちらもメリット・デメリットを確認します。
メリット
・引っ越さずに済むようであれば、初期費用がかからない。
・毎月の家賃の一部が経費にできる。
・通勤がないので楽。(人によってはデメリットにも?!)
デメリット
・事務所利用可物件ではない場合は、大家さんとの交渉が必要。
・自宅住所を公開することになる。
・来客対応がしづらい。
レンタルオフィス・バーチャルオフィス
最近はレンタルオフィス・バーチャルオフィスに関連したサービスが増えてきたため、だいぶ利用しやすい環境が整ってきたと言えます。
これらのサービスを運営している会社であれば、会社を登記をするために住所が必要だということも理解しておりますので、話が早いです。
多少のコストをかけられるのであれば、この選択肢が一番無難ではないでしょうか。
メリット・デメリットを確認しておきましょう。
メリット
・安価にオフィスと住所を利用できる。
・一等地の住所を利用できる。
・起業・創業に理解があるところが多いため、相談にも乗ってもらいやすい。
・郵便物や電話の転送など、関連したサービスが揃っている。
デメリット
・同じ住所に複数の会社が登記していることになる。
・許認可の取得等で制限を受ける場合がある。
所在地選択の考慮点
登記をするにあたっての住所をどのように確保するかを見てきましたが、それぞれに良し悪しがあり、ビジネスの形態によっても影響してくる要素が変わってくるため、ご自身の事業としっかりと照らし合わせながら検討してみてください。
そしてもう一点、住所を決めるにあたって考慮することをお勧めしたいことがあります。
助成金・融資制度の確認です。
それぞれの都道府県・市区町村では、創業や事業に対する助成金・融資制度が設けられており、地域によっていろいろとあります。
それらをうまく活用することができれば、よりスムーズに会社を軌道に乗せることができるかもしれませんので、そのあたりも検討材料のひとつとしてみてはいかがでしょうか。
私の場合の本店所在地
私の場合はといいますと、ウェブ関連という比較的身軽で融通がききやすいビジネスでもあることから、よりコストのかからない方向を選択しました。
創業当時は賃貸アパートに住んでおりましたが、入居した当時は会社設立の予定もありませんでしたので、事務所利用のことは特に気にしていませんでした。
ただ、大家さんが上階に住んでいたこともあり、日頃からコミュニケーションが取れて良好な関係を築けていたおかげか、相談したところ、快く了承していただけました。
来客があるようなビジネスではありませんので(あってても近くのカフェなどで済ませました)、それまでの生活と何ら変わらない点もしっかりと伝えたことも付け加えておきます。
ポストにも会社名を入れたシールを貼らせていただき、本店所在地として一切の問題もなくビジネスに取り組むことができました。
自宅が事務所というのはとてつもなく楽な反面、自分をしっかり管理しなければ一気に堕落の世界へと突入してしまいますので、そのあたりの覚悟もある程度はしておいたほうが良いかもしれません。
ちなみに、現在は住居自体の引っ越しに伴い、レンタルオフィスに移転しています。
事務所移転による各種手続きは、それはそれで面倒で費用もかかってくることなので、どこに重きをおくかを考えたてストーリーを組み立てるのが良いかと思います。
今思うと、最初はバーチャルオフィスで始め、同じところでレンタルオフィスに移行するというような流れがよかったように思いますが、当時はそこまでの情報も持ちあわせておりませんでしたので、これから一人合同会社を始めようとする方には、そのような流れをお勧めしたいと思います。
バーチャルオフィス・レンタルオフィスの活用についてはまたあらためて書きます。